──何かが確かに起こった、と身体が先に知っていた。

発症

胸の奥で、ドン、と短い衝撃。次の瞬間、脈と呼吸のリズムが微かに乱れた。痛みは刃物のような鋭さではない。だが、奥へ奥へと沈んでいく重さがあった。私はその瞬間、自分の体が「いつもの不調」とは違う警報を上げていると理解した。

サイン

冷たい汗、浅くなる呼吸、言葉がわずかにもつれる。時計を見て、時刻を記録する。自分に問いかける──どこが、どの程度、いつから。体の声に耳を澄ませるため、余分な音を切る。

決断

迷いは時間を削る。私は「いま必要なのは正確さと共有だ」と決め、症状と発症時刻、服薬状況、既往をメモにまとめた。救急に向かうならこの順で伝える、そうルールを口に出して確認する。

移動

深呼吸は浅く、歩幅は小さく。無理をしない。連絡先に短いメッセージを送る──「体調異変。病院へ。経過は共有します。」クルマではなく公共交通とタクシー、あるいは救急要請。安全側に寄せる。

受け入れ

受付で、用意したメモを渡す。聞かれた順ではなく、伝えるべき順で話す。「発症は○時○分」「痛みの性質は」「左右差は」。私は専門家ではない。だからこそ、主観と事実を区別して渡す。

記す理由

この章は、医学的な解説ではない。最初の数分でできる準備を物語として残しておくためのノートだ。私たちは、未来の自分にとっての「過去の私」でもある。だから記す。次に備えるために。

※ 本文は個人の経験記録であり、診断や治療の指示ではありません。気になる症状がある場合は、直ちに医療機関に相談してください。

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